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『秘密の計画Ⅰ』2020年7月26日

【聖書箇所】 エフェソの信徒への手紙3章1−13節

【説教題】  『秘密の計画Ⅰ』

【説教】  石丸泰樹牧師

一、「エフェソの信徒への手紙」は「キリスト・イエスの囚人となっているパウロ」から送られてきた手紙です。その状況は言行録28章16-20節に簡単に記されています。教会の伝承によれば、パウロはAD60年頃にローマで殉教の死を遂げています。主イエスの弟ヤコプはAD62年にエルサレムで、使徒ペトロはAD64にローマでそれぞれ殉教したと伝えられています。いずれも皇帝ネロ(在位54-68)の治世下です。当時のローマ皇帝は、今日想像もできないような権力を、帝国内のすべての民族、部族の人々に対して持っていました。パウロは「神のみ心によってキリスト・イエスの使徒」とされたと、この手紙の冒頭で明記しています。「使徒」は自分を派遣した主人の意志に従って主人からの伝言を伝え、領内の隅々まで、領主、国王の善政を感謝し讃美する歌声をもって満たすのです。

二、パウロの言う「計画」はここでは「ミュステリオン」という言葉が用いられています。英語でミステリーというと「不可解なこと、神秘的なこと」となりますが、聖書では「奥義、秘密の教え」と共に「神の意図、計画(1:9、3:4)」とも訳されています。主キリストの来られる前は神様のご意志が理解できなかったかも知れないが、今や(3:5、3:10)全世界の人々(異邦人6節)が同じ約束に与かる者(3:6)となった。また使徒たちの奉仕を引継いで歴史上の教会が、天上の支配や権威にまで(3:10、ピリピ2:1)、宣教をし続けるのです。

三、かつて日本に高山右近(1552-1615)という武将がいました。1549年に来日した宣教師フランシスコ・ザビエルに導かれた日本人修道士ロレンソから1564年、12歳で洗礼を受けました。時は戦国時代、織田信長、秀吉に仕え、高槻城主となります。彼は学んだ聖書の教えに従い、隣人愛と慈善の業を信仰の本質的な要素とみて「ミゼルコルジアの組み(慈悲の組)」を作り実践したとのことです。自ら領内を歩き回り、途中で貧しい者、着る物、食べるものに困っている者があれば助ける組を作り、特に死者の葬りには心を砕いたといいます。当時、火葬、埋葬は非人の仕事になっていました。「死はけがれ」とされ、当然葬儀も汚れの仕事であった。それら貧しい人々の葬儀に参列者はなかった。しかし「死は勝利に飲み込まれた(Ⅰコリント15:54)」のです。右近は棺を白布で覆い、中央に白い十字架をつけた。葬列の先頭には高く掲げられた十字架が進んだ。戦乱で父や夫を失った子供や妻には、生活の保証を与えた(フロイス書簡1578年)。究極の苦難と恐れであった「死」が、主イエスの十字架の贖いによって永遠の命に救われているという信仰はすべての領民の心に平安を与えた。信長暗殺後(1582年)近畿地方各地で掠奪・暴行が頻発した時も、高槻領内は平穏であったという(チースリク著:高山右近史話)。

 「苦難を見て落胆しないで下さい。この苦難はあなたがたの栄光なのです(3:13)」。

病魔が世界を襲う最中でも、自然災害に翻弄されるときも、主はすぐ側におられ、「安心しなさい。私だ。恐れることはない(マルコ6:50)」とのみ声を届けて下さいます。

 インマヌエルの主よ、あなたの平安に感謝します。アーメン


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