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『トマスの喜び』 2020年4月19日


【聖書箇所】 ヨハネによる福音書 20章 19節~31節 【説教題】 「トマスの喜び」

【説教】 石丸泰樹牧師

一、 本日の聖書日課は、まだイースターの当日に起こった出来事を語っているものです。弟子たちの心の中にあったことは、1週間前の、エルサレム入場の日の高揚感、また木曜日に、脳裏に刻まれた主の究極のへりくだりの「洗足のお姿」。その後、晩餐の時の主の新しい契約のみことば。私の「体と血潮を受け、口にせよ。」人の真の命は何によって育まれ、守られるか(ヨハネ14:6、15:4)。人類の永遠の問いに主が具体的に与えてくださった答えです。これは弟子たちの理性、常識、この世的願望の全てを打ち砕いたことでしょう。何一つ自己弁護をなさらずにその命を十字架に捧げてしまわれ、茨の冠をこうべに受けられた主の衝撃的な死のお姿。

二、ナザレのイエスは「ローマの反逆者、ユダヤの神殿宗教とそれを支えてきた伝承と伝統、神殿をめぐる権益、権力への反対勢力、革命家」と弟子たちも考えていたのであれば、支配階層やそれに同調する世間一般の人々を恐れて、扉にも窓にも心にも鍵をかけていたかったことでしょう。しかし十字架の死から甦られたこのお方は、それらを遥かに越えて全く次元の違う「天地の造り主、全能の父なる神の子」と信じられれば、支配者や世間一般の人を恐れなくなるのです。どこにも、壁や扉を造らない。鍵をかけないのです。主がくださる平和があるので(ヨハネ14:27)心を広くあけられるのです。このことが良くわかると、人を赦すことができます。主が息を吹きかけてくださるとは(20:22)、「聖霊を授けてくださり、主イエスの愛を自分と言う存在の隅々にまで行き渡らせてくださる」ということです。ここから「復讐の文化」が終り、「赦しの文化」が始まるのです。主イエスの十字架上での赦しの言葉を聞いて(ルカ23:34)、十字架上の犯罪人の一人は悔い改めることができました。また石打の刑で殉教の死をとげたステファノの(使徒7:60)祈りを聞いたサウロも同じでした。主イエスの全たき赦しは、人を利己的な頑固さから軽々と解き放ってくださいます。

三、主のご復活の日に外出していたトマスは、翌週の日曜日にやっと主にお目にかかることができました。「四人目の遅れてきた博士(バン・ダイク)」は気付かなかったけれども旅の途中で出会った助けを求めている人々と、愛の分かち合いを重ねる度に主イエスに出会っていたのです。

トマスは大工さんであったといわれます。自分の採寸が一目盛り違えば、家も家具も牛車も具合が悪くなります。仕事も、物の考え方も四角四面で頑固であったことでしょう。主にお目にかかれなかった辛さを、いかにも実証主義者らしく愚痴をこぼしました。その時、主が微笑みと共に「どこでもドア」から入ってこられトマスの望みをかなえてくださろうとされました。仲間に遅れをとったトマスの僻み(ひがみ)は一瞬にして癒されました。

四、やがてトマスはインドに初の宣教師として入り、インド王を救いに導きました。インド西海岸のゴアに「聖トマ教会」があるという伝説はヨーロッパに伝わっていました。AD 1498年、ヴァスコ・ダ・ガマはインド、マラバル地方でキリスト教会と思われる建物、信徒の群れに出会いました。アレッサンドロ・ヴァリニャーノ(1539−1606、イエズス会司祭、1582年−天正少年使節4人をローマに往復引率した人)はこの諸教会を問安し、教会を整え、信仰を導き、5万人以上の人々が参集した由。ヴァリニャーノは三度来日されましたが、日本のキリシタンたちにこのインドの信徒と教会について伝えると、皆喜び、励まされ、インド宣教のために祈ったということです(日本巡察記)。 

この地方出身のインド人、イエズス会司祭ボニー・ジェームス神父が2014年日本での宣教に協力するために来日され、山口での奉仕の後、今四谷のイグナチオ教会で奉仕しておられます。

主のご復活の恵みを、その前で立ち止まってしまっている自分の壁、限界を越えて家族や友人、隣人と分かち合いましょう。

わが主よ、わが神よ、力と喜びを増し加えてください。アーメン


【主の祈り】


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